もうすぐ子どもたちにプログラミングを教える予定の先生方に、プログラミング言語の学習方法などを提案します。
目次
1.はじめに
2.子ども向けプログラミング言語と学校
3.子ども向けプログラミング言語Scratchの特徴
4.プログラミングを子どもたちに教えるには
5.学校におけるプログラミングの位置付け
6.先生におススメするプログラミング言語の学習方法
7.まとめ
1.はじめに
私は、C言語などのプログラミング言語やコンピューターの基本ソフトであるLINUXの元となったUnixなどのOS、応用ソフトであるワードやエクセルなどのビジネスソフトを大人に教える仕事に長年携わり、また、約7年間、小中高校大学に向けてビジネスソフトのマーケティングも経験しました。
そのマーケティングの仕事では、ビジネスソフトを使用した学校での子供に対する授業の事例を作るためなどで、毎年数校のプログラミング授業を見学しました。
現在は、IT企画研究所の代表として、主に学校の先生など、子どもたちにプログラミング言語を教える予定の大人の皆様に向けて、様々なサポートを行う仕事をしています。
もうすぐ子どもたちにプログラミングを教える予定の先生方に、そんな私から、子どもたちのポテンシャルについてをお話しするとともに、 先生方ご自身のプログラミング学習に関するヒントなどをお伝えしたいと思います。
2.子ども向けプログラミング言語と学校
小学校や中学校でよく使われるプログラミング言語には、 Scratchを始め、プログラミン、Google Blockly、VISCUITなどいろいろな言語がありますが、どの言語も簡単に派手な動きや派手な音を実現できて、小1の子どもでも、あっという間に、とても楽しいプログラムを作ることが可能です。
学校が授業で扱うプログラミング言語は、大学の研究グループが作成し現在も維持管理していたり(Scratch:米国マサチューセッツ工科大学の生涯幼稚園グループが開発した言語)、政府が開発したり(プログラミン:Scratchをオマージュして文部科学省が開発した言語)していて、誰でも無料で利用できるものも多いです。
3.子ども向けプログラミング言語Scratchの特徴
プログラミングは 頭の柔らかい子どもたちにとっては遊びに近いアクティビティです。
特に、子ども向けのビジュアルプログラミング言語であるScratchは、ブロックと呼ばれる図でできた命令をドラッグアンドドロップでつなげてプログラミングを行うので、少しコツをつかむと、どんどんいろいろな機能を試したくなります。
例えば、動物や乗り物を動かしたり、空を飛ばしたり、予め提供されている音楽を鳴らしたり、自分で音符を組み合わせ楽器も選んで音楽を作ったり、色を変えたり、変形させたり、いろいろな音声で言葉を出力したり、翻訳したり、といった一見難しそうな処理がほんの数個のブロックで直感的かつ簡単に作れます。
4.プログラミングを子どもたちに教えるには
プログラミングを子どもたちに教えるには、環境を用意し、起動方法や、何ができるかについて、一つ二つ具体的に説明してあげるだけでよく、その後、子どもたちは自身で試行錯誤を重ね、自ら大人に質問して、大人から見ると驚くほど短時間に、遊びの延長かのように楽しみながら、プログラミングの手法を習得していきます。
一方、プログラミングを子どもたちに教えるとき、大人のプログラミング研修のように、受講者全員が講師の指示に従ってすべての操作を同時に正しく行いながら講義に参加するスタイルの授業をいくつか見学したことがあります。
このようなスタイルでは、プログラミング学習も退屈な”いつもの勉強”の時間になってしまっていたようで、子どもたちにとって楽しい時間という感じには見えませんでした。
考えていただければ同様の感想をお持ちいただけると思いますが、先生が説明している間は操作してはいけないと言われて、子どもたちがそれを我慢するのはとても難しいだろうと思いました。
なぜなら、大人向けの講習を行う際、講師は受講者に、操作は講師が指示をしてから行うようにお願いしますが、大体いつも講師の指示を待てない方が1~2割はいます。
大人でも待てないのですから、子どもに操作を待てと言うのは酷なことだと思います。
指示通りの操作しかしてはいけない場合、目の前の面白そうなものを触らずに、話しをじっとして聞かなければならず、さらに、操作では、決められた操作だけを要求されるので、フラストレーションがたまり、好奇心もモチベーションもどんどん削られていくのではないかと思います。
さらに、子どもたちに教える場合、先生が短めに、かつ、端的に説明を進めていたとしても、一人一人の子どもは途中からそれぞれ別の機能に興味を惹かれていきます。
その瞬間に触ることは我慢できたとしても、興味を惹かれる機能や画面の部分などに集中が移ってしまい、その後の先生の説明が耳に入っていないようなこともよくあります。
子どもたちの好奇心やモチベーションを保ったまま、どうしても必要な基本機能を伝え切り、どのように一人一人の子どもの”知りたい”をサポートしていけるかが、先生の手腕になるかと思います。
5.学校におけるプログラミングの位置付け
2020年度から小学校でも必須となるプログラミングですが、学習指導要領にもあるように、プログラミング自身を学習させることが目的なのではなく、教科の学習の中などでプログラミングを行うということで、プログラミングは学習やイベントにおいて、何かを表現するためのものを作る、道具の一つとして使うことが期待されているのだと理解しています。
別の言葉で表現すると、コンピューターとプログラミング言語は、ものを書く/描くのに必要なもの:鉛筆、ペン、クレヨン、絵の具、紙、キャンパス、とか、物を作るのに必要なもの:はさみ、カッター、のみ、のこぎり、のり、紙、粘土、木などと同様に、学校で使う道具とその道具によって加工される材料として、新たに加えられたもの、という位置付けなのではないかと考えます。
6.先生におススメするプログラミング言語の学習方法
このような状況と、子どもたちの多様な興味に対応するために、もうすぐ子どもたちにプログラミングを教える予定の先生方は、ご自身がお勤めの学校が使うプログラミング言語について、次の観点からご自身の学習を進められると良いのではないかと思います。
➀基本を覚える
・起動し、典型的な例の短いプログラムを、作って、実行し、終了する
・各機能に特化した、典型的な短いプログラムを作る
➁自分で疑問に思った機能、興味がわいた機能を、調べて、少し深く勉強する
➂自分がプログラミングしたり操作してうまくいかなかったことをまとめ、それぞれに対して、うまく行く方法を探してまとめる
自分が、この機能はどんな機能だろうと思ったものは、程度の差こそあれ、他人も興味を持つ可能性があります。
そう思った機能は、調べて少し深く勉強しておくと、子どもの先を行くことができて役に立つ知識になると思います。
また、プログラミングでは、大体自分が失敗したことは、他人も同じように失敗します。
自分が引っかかったり、理解しにくかったことは、大体他人も同じように引っかかったり、理解しにくいと思うようです。
また、見つけにくい機能、操作しにくい機能なども、同様です。
だから、自分がつまずいた部分を、後からそれに出会う子どもたちのためにまとめておくと、必ず役に立つことと思います。
7.まとめ
教務も校務も忙しく、児童や生徒指導などもある上に、英語やプログラミングまで先生の仕事になり、先生方には大変な時代になってしまいました。
英語やプログラミングについては、外部の講師を雇う自治体なども多いと思いますが、それでも、やはり、子どもたちができるようになることを、先生方ができないままでいることは、きっとないと思います。
先生方にはいつでもなんでも子どもたちの先を行く人であっていただきたいという思いは、親以上に、子どもたちが抱くものなのではないかと思います。
IT企画研究所は、そんな先生方をサポートする、Scratch3.0の文法に関する情報などを中心とした無料メール配信(登録はこちら)や、Scratch3.0の細かい機能1つ1つを解説するYouTube動画(YouTubeチャンネルはこちら)などを無料で公開しています。
2020年度まであと残すところ半年。
この期間を有効に使い、子どもたちの先を行く先生になっていただくことを期待しています。
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